2019.01.19 「パナマ文書」(渡邊哲也)第一版2016年5月

■反社会勢力撲滅の動きとタックスヘイブンの闇

 麻薬組織、マフィア、やくざ、テロ組織などの、反社会的勢力撲滅の方法の一つとして、金融規制がある。武力で壊滅しようとするよりも、リスクが小さく、効果が大きいとされている。非実名取引、匿名口座を禁止することによって、反社会勢力の取引をあぶりだし、摘発することだ。反社会勢力は、非実名取引、匿名口座を求めて、オフショアへ逃げる。そこは、国家権力もはねつける力を持っている。そうした金の力をバックに巨大な力を持っている勢力が、その追及をはねつけてきた。

■オフショアとは

 外国人や外国企業など、非居住者向けのサービス。このサービスを行う国や地域を、オフショア金融センターと呼ぶ。目的は、税を軽減したり、免税することで外国人の持つ資金を呼び込んでいる。このため、オフショアの多くはタックスヘイブン租税回避地)である。匿名での会社設立や運用が可能となっている。サービス提供する側にとっては、現金があれば、運用益が得られて楽して儲けられるのだ。

■税金逃れ集団

 グローバル企業など世界にまたがる企業は、親会社をタックス・ヘイブンに設立したりする。親会社に利益を集めることで、各国には税金を払わない。税金を払わないグローバル企業と一般の企業では不平等な競争基盤となっている。グローバル企業は税金を払わず、各国からお金を吸い上げ、99%の人々はさらに貧しくなっていく図式である。

■税逃れの特権階級に対する戦い

 各国で税逃れを許さない動きもはじまっている。例えば、アメリカは、2009年以降、スイスに対してアメリカ人の口座情報を提出するよう求めた。拒否するならば、「アメリ愛国者法」を適用してアメリカ市場からスイスの金融市場を締め出す、と脅した。スイスは初めて屈服し、銀行法を改正した。シティバンクジャパンは、暴力団ややくざなどの口座を作っていたことでアメリカから何回か摘発され、制裁金を科せられた。シティバンクは日本でのプライベートバンク部門を閉鎖した。

■そうした中での「パナマ文書」流出

 各国首相関係者、有名人では、メッシやジャッキーチェンなどの名も。イギリス・キャメロン首相の関係者の名が出て、EU離脱の動きが加速したとも。中国では、このニュースを禁じている。パナマ文書で出てきたのは、ロシア、イギリス、中国で、アメリカの情報がなかった。情報をアメリカはコントロールしている、と考えられる。

反グローバリズム、反社会的勢力との闘い

 2013年、OECD「税源浸食と利益移転に関する行動計画を開始。この時点からすべては動き出している。