2019.02.18 「銃・病原菌・鉄」(ジェレド・ダイヤモンド)草思社

■欧州の白人による他民族、他文明のジェノサイドの歴史。

 ヨーロッパの白人が世界の各地を侵略・征服し始めた(植民地化)のが1500年代。ヨーロッパの白人は鋼鉄製の武器を持ち、進んだ道具を持ち、騎馬を扱った。彼らの優位性は、他民族を侵略、征服し、滅ぼすことができた。

 多くの国が、いまでも植民地時代の過去と戦っている。多くの先住民が、侵略者政府に対して抵抗運動を行っている。一方で、ハワイ先住民、オーストラリア先住民、シベリア先住民、アメリカ先住民たちは、大量虐殺によって(女は残したとしても男は皆殺し)、人口が激減し、文化を失い、戦う力もない。多くの民族、文化、言語が消滅し、現在も多くの言語、文化が消滅の危機を迎えている。

 ヨーロッパの白人は、アメリカ大陸を侵略し、先住民を皆殺しし、アフリカ人を奴隷・家畜として連れ込んだ。

ポリネシア人同胞による虐殺。

 1835年、ニュージーランドの東にあるチャタム諸島にマオリ族500人が突然やってきて、宣言した。「モリオリ人はこれから我々の奴隷とする。抵抗すれば、殺す。」

 倍以上の人口を持っていたモリオリ人は、争いを好まない、平和な文化を持っており、抵抗しないことを話し合いで決め、資源の分配など、平和的折衷案を示すことにした。しかし、その案を出す前に、マオリ族は襲い掛かり、殺し、食べた。

 生き延びて奴隷になったモリオリ人は言った。「自分たちの社会の常識・慣習に従い、平和的に話し合い解決しようとしたが、獣を殺すように襲い掛かってきた。」征服したマオリ族は言った。「自分たちの社会の慣習・決まりに従って、行動しただけだが、それが何か?」

 モリオリ族もマオリ族も元は同じ祖先をもつポリネシア人だった。やがて、別れて、それぞれの社会を作ってきた。モリオリ族は豊かな環境で、平和的な小集団生活を享受してきた。マオリ族は、限られた資源の中で工夫し、専門家集団を作り上げ、組織的行動ができる技術を持っていた。ある情報がマオリ族にもたらされた。「チャタム諸島には豊かな食料に恵まれ、そこに住むモリオリ族は戦う意識がなく、武器も持たない。」(まるで、日本のようではないか。いま中国人がきれいな食料、水、空気、土地を求めて侵略中。)

■恵まれた環境は、進化を止める。歩みと止めたものは、みんなに置いていかれる。

 アメリカ大陸、オーストラリア大陸、アフリカ大陸やアジアの民族は蹂躙されても抵抗のできないほど弱者になった。「発明、新しい発想、を許容する社会か、否か」(保守的な社会か、面白がれる社会か)

 目の前のつまらない利益に目がくらんで、新しい世界を拒否することも昔から多い。・1971年、アメリカ議会は超音速旅客機開発予算の捻出を拒否した。・電気が発明されたにもかかわらず、イギリスはガス灯を守り続けた。・半導体アメリカで発明されたのに、アメリカメーカーは真空管にこだわり、半導体シェアを日本にとられた。・メキシコ先住民は、車輪のおもちゃを発明しながら実用化しようとしなかった。

■外圧によって、小規模集団が連合する。

 アメリカ・チェロキーインディアンは、白人入植者に対抗するため部族が一つにまとまった。中国周辺の遊牧民族は、中国の圧力に対抗するため、力を合わせて、貿易を求めるようになった。アメリカの入植者13州は、イギリスの圧力に対抗するため、連合した。ヨーロッパの国々は、イスラムの大帝国の圧力に対抗するため、キリスト教の神の名のもとに力を合わせた。日本は、欧米の圧力に対抗するため、薩長土肥連合を作り、新しい政府を作ろうとした。

■1500年代のヨーロッパの躍進と反対に中国は進化・発明を止めてしまった。

 それまで多くの発明を行い、航海技術、海洋技術も発達させ、アジアからアフリカまでの大航海時代を始めていた。(鄭和の南海遠征)船団派遣を中止するとともに、造船所も取り壊し、外洋航海も禁じられた。水力紡績機の開発も禁じた(産業革命の芽を摘んだ)。